世田谷パブリックシアター(三軒茶屋)は2回目
3階のほぼ最後列の席でしたが十分よかったです。
年齢層はかなり高めで男性も多く、立ち見も出ていました。
私はチケットすんなり取れてしまっていたので、賑わいにおどろいた。
「書く女」のポスターが現代劇のようだったので
まぁ、さらっとした内容なのかしらと思っていましたが、
なんと大正時代の話で「書く女」とは樋口一葉のことでした。
一葉という女性の生涯を永井愛さんなりに解釈したつくりになっていたようです。
現代の書く女性からみたなりの一葉の姿がリアルに表現されていて
作り手の「生みの苦しみ」を日常的に味わっている
「はしっくれ」な現代女性(自分含む)にとっても共感できる内容でした。
う~~ん、おもしろいっ!!
ラッキーなことに、舞台のあと、ポストトークありの日でした。
永井愛さん、寺島さん、筒井さんが椅子を並べてトーク。
寺島さん:
「台本は10日前に出来上がってきて、
短時間でセリフを入れるのが大変で、寝る前も台本にずっとめを通していました。
トチらないか心配で初日はどきどきでした。
細かく演出してくれるんだけど、書いた人(永井さん)が演出しているので
説得力があるというか、とても的をえているんですよ、
納得しながら進められて、やりやすかったです。」
永井さん:
「お汁粉をつくってあげたりという、当時の男性としてはめずらしい、
女性にやさしい男を書いてみました。
仕草の支持も結構細かくて
筒井さんなんかは、一葉にお汁粉をもてなす場面で
回数を重ねてゆくごとにお汁粉作りもどんどんうまくなっちゃって
最初は出来たお汁粉をお椀に注ぐときに
お玉で鍋のそこをずずーっと引きずってぎこちなかったのに
最近は、とてもおいしそうによそう(笑)」
「そんな男性もぐっと来ますよね」となんかそういう方向へも脱線。
ポスターの秘密(ポスター撮影は実際永井さんの家へ行って
使った机と衣装は永井さんの私物!)トークなんかも聞けた。
(結局、筒井さんは殆ど言葉を発せず、トークショーは終了)
寺島さんは女優というより役者オーラがある。
梨園というフィルターを忘れさせる、有無を言わせぬ存在感!なんだよなあ。
筒井さんは限りなく癒し系でした。
「棒読み風」な台詞まわしがいい味だしてる。
頑張って足を運んで正解でした。いい休日でした。
もう1回みたいんだけど、、と思わせる、内容の濃さでした。
2006年10月2日~15日 二兎社「書く女」
日の丸・君が代問題に果敢に切り込み、数々の賞に輝いた『歌わせたい男たち』から一転、今回の二兎社は明治の女性作家、樋口一葉を取り上げます。24年の短い生涯で、貴賤・男女を問わずさまざまな人びとと交流し、「出会い」を書くエネルギーに転化した一葉。自らも「書く女」である永井愛ならではの新しい一葉像に迫ります。
作・演出:永井愛
出演:寺島しのぶ/筒井道隆/八木昌子/小山萌子/石村実伽/粟田麗/江口敦子/小澤英恵/向井孝成/中上雅巳/杉山英之/細貝弘二
会場:世田谷パブリックシアター
最近の永井愛は、今の日本社会で実際に進行している出来事に取材し、「現代日本人の自画像」を舞台上に描いてきましたが、今回は一転して明治の女性を題材に選び、永井のもう一つのテーマ「女性の生き方」を追求します。取り上げるのは、五千円札の顔として今やすっかりお馴染みの樋口一葉。わずか24年の生涯で『たけくらべ』『にごりえ』などの名作を残し、日本女性では初めて、「職業作家」として名を成した人物です。一葉は東京の外に出ることもなく、たかだか半径数キロ圏内でその生涯を過ごしましたが、江戸から明治への転換期に居合わせた彼女の瞳は、想像以上に多くのものをとらえていました。永井は、短い時間にたくさん生き、小さな空間から世界に思いを馳せた「新しい女性」としての一葉像に迫ります。
「サロンの女主人」としてのめくるめく日々
樋口一葉というと、「薄命」「貧困」「悲恋」など、不幸な女性の代名詞のような言葉ばかりが浮かびます。が、果たしてそうだったのでしょうか? 一葉が文学雑誌「文学界」にデビューすると、一躍文壇の注目を集め、多くの「文学界」同人たちが、次々と一葉のもとを訪れるようになりました。樋口宅は、青年文士たちが集う「文学サロン」と化し、一葉は彼らとの文学談義に花を咲かせます。「女が出世するには、よいところへ嫁に行くか、金持ちの妾になるしかない」と言われた時代、溢れるような才能で男性を引きつけ、対等な人間として渡り合った一葉は、現代女性の目から見ても理想的な存在です。この作品は、「文学サロンの若き女主人」として一葉が過ごした豊かな時間を再現します。
様々な人々との交流の中で培われた創作のエネルギー
歌塾「萩の舎」では上流階級の令嬢、荒物屋を営んでいた竜泉寺では遊女をはじめ、社会の底辺で生きる人々と、一葉は短い生涯の中で、多種多様な人間と出会いました。
また、「文学界」仲間の平田禿木・馬場孤蝶・川上眉山との交流や、相場師久佐賀義孝との危険なやりとり、「奇跡の十四ヶ月」に出会った皮肉屋の斎藤緑雨との友情など、男性とも幅広いつき合いがありました。不完全燃焼に終わった(?) ものの、小説の師匠・半井桃水への身を焦がすような恋も経験しています。これらの人々との関わりの中で視野を広げ、恋愛面では抑圧せざるを得なかった(と思われる)エネルギーを、創作活動へと転換し、「書く女」への道を邁進していった過程を振り返ります。
一葉は「キャリアウーマン」の先駆け?
当時、女性が職業作家となり、原稿料をもらって生活するなど、前代未聞の生き方でした。一葉は、「女に学問はいらない」「女だけれども、戸主として家を守れ」等々、女であることの制約や矛盾を常に肌で感じ、学校で勉強を続けることも、恋慕う男性と結ばれることも、思いとどまらざるを得ませんでした。「女であること」の重みに耐えながら、才能を磨いて自己実現を果たしていく一葉の姿に、程度の差こそあれ、「女であること」の呪縛から完全には解放されていない現代の女性たちも、きっと共感を覚えることでしょう。
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